2012年4月1日日曜日

オレオ警部と消えた凶器の謎

「きみが訪ねてくるとは珍しいこともあったもんだね」
「全国異種交流会主催の警察動物会議がこちらであったもんでね。実際のところ、会議に出ている暇などないんだが。実は今、やっかいな事件を抱えている」
 オレオ警部を訪ねてきた旧友は、制帽を脱ぐなりそう切りだした。
「ほう、全国に知られるきみがやっかいというからには相当なものだな」
「そんな若いころの話は勘弁してくれよ。それで、オレオ警部の意見も聞きたいんだが」


 事件は会長夫人の誕生日パーティーの席上で起きた。ケーキのろうそくが吹き消され、サロンが真っ暗になる演出があった。灯りが点灯されたときには、会長夫人の大切にしている高級家具に深い傷がついていたんだ。
 この会長夫人が女傑で、たいそう怒ってね。その場にいた全員の身体検査をしたんだ。ところが家具を傷つけた凶器は誰も所持していなかった。僕は会長夫人に呼びつけられ、徹底的に室内の捜索を行ったんだが、どこからも凶器は出てこなかった。

「ふむ、消えた凶器の謎というわけか。ケーキと言っていたな。ケーキを切るためのナイフは室内にあったんじゃないのか」
「使用人の不手際でケーキとフォークはまだサロンの外にあったんだ」
「傷はどのようなものだい」
「二十センチにも渡る直線だ。しかも三本もつけられているんだ」
「ふむ。……どれ、ちょっと揉んでみるとするか」


(もみもみ)

「あ、まさか!」


「なあ、被害者は会長夫人と言ったな。どこの会長なんだ?」
「全国異種交流会の会長だよ。ブルドッグの女傑だ」
「やはりそうか。異種交流会ということは、そのパーティーに参加していたメンバーは多種別なわけだな。犬だけではないだろう」
「ああ、イヌ科が多かったが、若い猫も一匹いたな」
「わかった、犯人、もとい犯ニャンはその猫だ」
「いや、彼女は凶器になるようなものは何一つ持っていなかったぞ」
「おいおい、忘れちゃ困るなあ。凶器を持ち歩いたりしなくても、猫にはもともと立派な凶器が備わっているのさ」



※協力:ひじき氏

「しかし、彼女の爪はそんなに飛び出していなかった」
「猫は爪を自分の意志で引っ込められるのさ」


※協力:ひじき氏

「ああ、そうだったのか。これは大変だ、すぐに手配しないと。僕はこれで失礼するよ」
「あ、帽子を忘れているぞ……ああ、もう行ってしまった。相変わらず彼はせっかちだなあ」
 オレオ警部は、新米警官時代の子猫保護が歌となって全国に知られるようになった元・犬のおまわりさん――現在は犬の刑事さんの帽子を片手に、やれやれとつぶやくのであった。

2 件のコメント:

  1. ララムキエカ2012年4月4日 13:29

    今回はオレオ警部、無事解決しましたね(^^)
    協力ひじき氏とか、細かいこだわりが好きです!
    春になると布団も揉み揉みが出来なくなり、事件解決に支障をきたすのでは?と心配しております。
    これからも続けてくださいね!

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  2. ララムキエカさん
    コメントありがとうございます。
    ああ、ばれましたか! そろそろオレオ警部苦難の季節が来るのです。
    こたつ布団がなければ他のものを揉みます。写真が撮れるといいのですが。

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