2011年8月21日日曜日

ある闘争

「まったく、あいつらときたら、ろくな飯もよこしやしねえで。こっちもだてや酔狂で猫をやっているんじゃねえんだ」
 オレオは血気盛んな青年である。かれの雇い主からの手当てに不満があり、くすぶっていた。この若く、恰幅の良い青年は、内側からあふれる衝動に突き動かされ、何かむしゃくしゃした気分だったのである。そのとき、かれの視線のさきに気弱そうな若者のすがたをみとめた。
「なんだ、このひょうろくだまが」
 オレオと比べると、その若者はごくふつうの体つきで、ちょいとばかりにらみをきかせればシッポを巻いて逃げ出しそうなていだった。



 若者はがばりと身をおこした。たちあがると若者の身の丈は一尺五寸にもなった。立ち上がりながら若者はオレオのあたまに向かってすばやく左腕をつきだしたのだ。



「おお、いったいなにしやがんでえ、あぶねえな」
 予想できない攻撃にオレオはたじろいだ。おとろいて腰が引けてしまっている。



 若者は地面に足をふんばりオレオを横目でにらんだ。興奮のあまりかれのシッポは、かれの首の太さにまで脹らんでいたのである。


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昭和三十年代くらいの小説を読んだら、文章がどことなく昔風でした。一文一文をとってみたらそれほど違いはないように思えるのですが、通読するとちょっと今と違う。なんとなくそののりで(成功しているとは言い難い)。

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