2010年11月21日日曜日

秋の怪談

* オレオ
 正直、あんまり話したくないんだけれど、どうしても聞きたい? いいけど、あとでどうなってもしらないからな。
 オレがあれに会ったのは土曜日の朝早くのことだ。朝飯係はまだ寝ていて、夕飯係は起きてたみたいだけれど部屋に閉じこもっていたな。オレは起きて、いつものパトロールに出ようとした。ほら、うちには頼りない連中しかいないから普段からオレが侵入者や不審物がないかを見張らないといけないんだ。
 リビングで軽い準備体操(前足のばし、後ろ足のばし)をやってからオレたちの部屋へ行った。今思えばあんとき、もうリビングで変な音は聞こえていたんだよな。大したことないだろうと思って無視しちまった。それが余計に悪かったかもしれない。
 部屋に行って水を飲んだ。トイレの点検をして匂いつけをし、爪研ぎで爪を研ぎあげて、廊下へ出ようとしたらそいつが飛び込んできたんだ。
 とにかくすごいスピードで、やつは暴れ回った。一見、オレたちの仲間かと思ったが、そうじゃなかった。
 考えられるか? やつの足のあるべき場所に足はなくて、白くぼやっとした影だけだったんだ。

* みねるば
 朝六時半くらいでしたか、ものすごい大きな音と揺れを感じた気がして目を覚ましました。最初は地震が起きたのかと思ったくらいです。まあ、寝ぼけていたので。
 ただ猫が走っていっただけにしては、えらく激しい。おまけに猫の走る音はしないのに、まだえらく大きな音がする。なんだこりゃと思っていると(寝起きで布団から出られない)、ぐりふぉんがキッチンにいって「ああ、コーヒーミルが倒れて動いている」と。それで、猫が家の中を走り回っていって、キッチンのコーヒーミルを倒して動かしちゃったとわかりました。
 さっきの地震のような物音も猫二匹がどだだだと走り抜けていった音でした。

* ぐりふぉん
 部屋のドアを閉めていたらリビングから猫の走る音が聞こえてきて、ああ朝の運動会かと思っていたら(みねるば注:オレオとひじきは毎朝、食事の前の軽い運動とばかりに、家の中をおっかけっこしてます)、なんだか様子がおかしい。終いにはががががと派手な音がしてきました。キッチンでコーヒーミルが倒れてスイッチが入っていたのはみねるばの言っていたとおりです。
 さて、この騒ぎを引き起こした当の猫の姿が見当たらない。探すとオレオはリビングのカーテンの影に隠れていました。コーヒーミルの音がよほど怖かったようです。ひじきの姿はリビングにはなく、猫部屋に行くと、腰高窓の出っ張り部分に座り込んでいました。なんだか様子がおかしい。抱き上げようとすると柱にしがみついて抵抗します。だだっ子みたいです。
 よく見ると、ひじきのお腹にビニール袋がまとわりついていました。

* みねるば
 ぐりふぉんがリビングに連れ帰ってきたひじきは観念したようにおとなしく、お腹にはスーパーのビニール袋の持ち手がはまっています。あまりにきっちりはまっているので、こりゃ抜くのは難しいと判断してハサミで袋を切りました。
 おそらく、ビニール袋にじゃれて遊んでいるうちに持ち手に頭がはまってしまい、抜こうと暴れているうちに肩を通って、お腹までいってつっかえてしまったのでしょう。頭が通るのにお腹がつっかえるだなんて……。いえいえ、なんでもありません。
 やたら大騒ぎの運動会も、袋が取れなくてパニックになったひじきが起こしていたみたいです。

* ひじき
 もー、びっくりした。ガサガサで遊んでいたら、なんか変なことになっちゃって、ボク、ガサガサに気に入られちゃった。体から取ろうとしても全く取れない。走ってもついてくる。ガサガサがあると走りにくくて、お腹もなんだか締め付けられるし、こまったから兄ちゃんのところに行って「助けてー」って言ったら、兄ちゃんはぴょこんってとびはねて逃げ出しちゃった。「おまえ誰だ!」って、「ボクだよー」って言っても兄ちゃん、ぜんぜん聞いてくれない。台所に入って、兄ちゃんを追いかけているうちにこんどはガガガガが音をたてだすし、ねぼすけのみねるばは「地震?」とか言ってるし。兄ちゃんが相手にしてくれないから、ボク、部屋で途方に暮れてたんだ。もう、このガサガサずっっと取れないかと思った。ああ、朝から疲れた。

* オレオ
 まったく恐ろしいことだったぜ。お化けなんて信じたくはないが、この目で見てしまうと本当に恐ろしい。
 ニンゲンたちや弟はのんきなもんだから、オレはパトロールを強化した。不審者や、怪現象の痕跡はないかと、あちこちの匂いを嗅いでまわった。クローゼットや押し入れのチェックも欠かさない。どこに隠れているかわからないからな。あまりの激務で土曜日は食事もまともにのどを通らなかった。食事中であっても、背後の警戒は怠らない。いつまたあいつが襲ってくるからわからないからな。
 いいか、これはオレからの忠告だ。お化けみたいなものに遭遇した場合は、逃げろ。未知の存在に何をされるかわからない。逃げることが勇気の場合もあるんだ。




というわけで、昨日は朝から大騒ぎでした。ひじき救出後、わたしは即寝てしまいましたが、オレオはカーテン裏にて固まっていました。ひじきが近寄っても怖がり、ごはんもまともに食べようとしないので「食いしん坊のオレオにいったいどんなショックが!」と。意外にジャイアンはホラーに弱いようです。

妖怪なめ猫
 
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